明月の魔女
芳賀 さやか
クトゥルフ神話TRPGを基盤としたシナリオと
それに付随する世界観、キャラクターデザイン、
実際の展示部屋の制作。
大学生活の4年間で特に印象的になった出会い、時間から制作テーマ・内容を設定。
日本のサブカルチャーを語るうえで切り離せないものとなった二次創作を基盤としながら自身の制作物としてどこまで色を出せるかを追求した。
ゼミのメインテーマだった衝動からイメージを膨らませ、自身が人生で培った「好き」の追求と、詰められるのかを第一に製作。一つの作品を完成させ同じ「好き」を持つ人へ共有、伝播させることを目的とした。
本作品では元コンテンツの設定、システムを取り入れながらも、実際の内容、作風にオリジナリティを取り入れ、今、私だから作れるものを目標に製作。
自身が今までの人生で重要だと認識することのできた「出会い」「愛情」をメインテーマとし、細部までシナリオ、世界観にこだわり探求している。
<優秀賞>
この世の表現物は原初のものを除き、すべからく「二次創作」です。意識と無意識の両面で影響を受けた二次創作が新たな表現を生み、今日の名作へとバトンは継がれていきました。AIの登場で権利管理は混迷を極め、二次創作におけるクリエイティブ・コモンズのルールメイキングが急がれますが、極端な規制は、二次創作ファンによる原作への流入や新たな物語と想像性の萌芽を摘んでしまうリスクも十二分に存在します。少なくとも二次創作によって、日本は世界一のコンテンツ大国となった側面は見逃せません。
その理解を下敷きとした上で、クトゥルフ神話の二次創作TRPGである本作で目を見張るのは、3万文字を超えるシナリオと、随所に散りばめられた繊細な描写力と行き届いた配慮でしょう。10時間近いプレイ時間に耐え得る物語構成とその可変性、それを支える舞台/キャラクター設計の緻密さが光ります。自分の好きを濃密に煮詰め、TRPGで出会った仲間に向けて紡がれた作品だからこそ、作者の熱のこもったフェチズムとやさしい感性が感じられる、透き通った物語だと思いました。